学校長より

体験から「経験」へ

百聞は一見にしかず」という諺(ことわざ)がありますが、子供たちが中学校生活の様々な場面そして機会においていろいろな体験をし、それを意味づけすることは重要だと考えています。●つまり、体験を体験のままで終わらせることなく、体験を「経験」へと昇華させると言うことです。●私たちは、日々の生活の中で、様々な体験をしていますが、そのほとんどが自分の意思とは関係なく起こっている事象です。例えば、街角で偶然、昔の友人に声をかけられ旧交を温める道を歩いていたら小鳥の囀(さえず)りに気づき、季節の移り変わりに思いを馳せるなど、偶然、突発を含め、誰かの意図あるいはそれとは関係なく与えられた事象なのです。もちろん、春の季節を満喫したいと散策する場所、時間を計画し、自らの意思で積極的な体験をすることもあります。●しかし、与えられた体験であろうと、自らの意思による体験であろうと、体験したことをそのままにしていたのでは、その体験を自分にとって意味のある事象とすることはできません。●なぜなら、体験は自分の外側に存在し、「経験」は自分の内側に存在するものなので、外側に存在する体験を自分の内側に存在させるための操作をしなければ、体験を「経験」へと昇華させることはできないからです。●その操作とは、体験したことを「思考」する、「言語化」するということです。つまり、自分が体験したことは、結局、どういう意味を持つものであったのか、今後へどう繋げていくべきかと「思考」し、必要に応じて「言語化」するのです。言い換えれば、外側にあるものを内側に存在させるための操作を行うことで、自分の思考力・判断力・表現力などを高め、知的財産へと導くことが、体験を「経験」へと昇華させると言うことなのです。●旧友と出会い懐かしかっただけで終わらせるのではなく、そこで感じたこと、考えたことを振り返り整理するのです。季節の移り変わりを今の自分がおかれている状況(状態)を踏まえて、いくつかの視点で繋げるのです。時にそのことは、これからの自らが進むべき道標のヒントを、日々の生活のエネルギー源ともなり得るのです。
●学校教育においては、体育祭や学校祭などの学校行事や高齢者との交流学習といった行事を行った際は、必ず、活動について話し合ったり、感想を書くなどの振り返りの時間をとったりしています。体験したことを振り返る活動を通して、「思考」させ、「言語化」させることで、外側に存在した体験を「経験」として内側の存在へと昇華させるねらいがあるからです。●ですから、この振り返りが表面的な活動であると、体験を体験のままとして終わらせてしまうことになります。●また、体験は当然、学校行事ばかりではありません。いや、それ以外の体験を子供たちは日々の生活でたくさんしています。●子供たちが、その体験を必要に応じ、「思考」し、「言語化」することで、内省するという習慣を身に付ける、つまり体験を意味づけすることで「経験」へと昇華させる術を身に付けて欲しいと願っています。●そのための手立て、仕掛けを意図的に行っていく教育活動に取り組んでいきたいと考えています。