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2021年9月の記事一覧

美しい日本語、正しい日本語

◆美しい日本語、正しい日本語◆

●まず、「美しい日本語、正しい日本語」を身に付けるためには、とにかく「語彙力」を身に付ける必要があると私は考えています。●自分の言いたいことをしっかり伝え、自分の思いを理解してもらうためには、チーズや小麦粉だけではおいしいピザが仕上がらないように、4番バッターだけでは強い野球チームができないように、吹奏楽の演奏で、管楽器だけでは素敵なハーモニーを奏でることができないように、少ない語彙では、自分の思いを相手に伝えることは難しいのです。●持っている語彙が多ければ多いほど、言葉は色彩豊かになり、人の心に届きます。人の心を打つことができるのです。●そして、語彙力を身に付けながら、その言葉を「適材適所」に使う力を養っていく必要もあります。せっかく身に付けた語彙を宝の持ち腐れとしてしまっては、残念だからです。●例えば、面白いと感じながら読んでいた物語でも、突然、違和感のある文章に出会い、興ざめしてしまったということはなでしょうか。また反対に、「雲が流れ、山がわたしに迫ってきた」や「車窓から風が殴り込んできた」という言葉に出会い、本当に風の動きが見えたり、風の強さを感じた経験はないでしょうか。●「ご覧ください」という意味を表す言葉には、「笑覧」「高覧」「清覧」などがありますが、私的なのか、仕事上のことなのか、文章にしたためるのか、話題の人物は誰か、伝える相手は誰かなど場面によって使い分けることができたら素敵ではないでしょうか。●例えば、「天皇陛下がご覧になった」より、天皇陛下に対してのみ使用する最高敬語を用いて「天皇陛下が天覧(叡覧)なさった」と表現した方が締まった表現となり、相手に与える印象も異なってくるはずです。●このように、言葉は適材適所に用いてこそ本来の力を発揮するのです。●さらに、大岡信さんの『言葉の力』でご紹介したように「美しい言葉、正しい言葉」とは、実は、表面的な美しさや正しさではなく、それを発した人の思い、気持ち、その基盤となる人間性が大切でもあるのです。●黒髪の描写において「つやつや」「はらはら」「ゆらゆら」という3種類の擬態語を使い分け、『源氏物語』に登場する女性たちの人格をも表現しきった紫式部のすごさを感じながら、ことわざ、慣用句、四字熟語、故事成語などを含めた、日本語という武器を一生のものとできるように、子供たちには日本語を勉強し続けて欲しいと願っています