2021年6月の記事一覧
ちょっと一息(お勧めの1冊)
ちょっと一息(お勧めの1冊)
著書名:『イン・ザ・プール』 作者: 奥田英朗
●本日は、奥田英朗さんが著した、伊良部シリーズ第一弾である『イン・ザ・プール』を紹介します。●連作短編で神経科の患者の物語が5つ描かれています。●注射を打つのがとにかく大好きで、滅茶苦茶、破天荒と言い表すべき精神科医である伊良部一郎の物語。●伊良部のあまりにも突飛のない言動に唖然としながらも、伊良部の天真爛漫さに思わず微笑んでしまう一冊です。●ただ、少しばかり「下ネタ」的なところもあるので、ご注意を●それでは、奥田英朗著、『イン・ザ・プール』を紹介します。
●伊良部総合病院の地下に診療所を構える精神科医の伊良部一郎は、色白肥満で中年マザコン、その上子供っぽくて注射が好きな変わり者。●彼の元に訪れるのは、水泳中毒、持続勃起症、自意識過剰、携帯中毒、強迫神経症の悩みを抱えた面々。●伊良部先生は、人の話は聞かない、やることなすことが理解不可能、とにかく滅茶苦茶で、注射ばかり打ちたがる。●それが治療と言えるものなら、あまりにも奇想天外、奇天烈すぎて、本当に医者なのかと勘ぐりたくなる。●患者は伊良部の言動に不信感を抱きあきれつつも、通っているうちにどこか彼を憎めなくなる。彼の天真爛漫さからくるものか?●でも結局、全員の症状が良くなってしまう。伊良部先生は、実は凄い人なのかも知れない。●確かに、伊良部先生、時に的を射ることも言っておりました。「ストレスなんてのは、人生についてまわるものであって、元来あるものをなくそうなんてのは無駄な努力なの」。●先生の元妻とのやりとりや看護師マユミの存在もおもしろい●伊良部一郎シリーズの3部作は、『イン・ザ・プール』、『空中ブランコ(直木賞受賞)』、『町長選挙』です。●機会がありましたら、お手にとってはいかがでしょうか。
ここで少しネタばらし
1 イン・ザ・プール
体調不良で伊良部の元に訪れた大森和雄。ストレスによる心身症と診断されるのですが、…。「伊良部先生、あなたも泳いでしまうのですか」と、思わず突っ込みたくなる。
2 勃ちっぱなし
持続勃起症の田口哲也は、伊良部の元へ通院するがなかなか良くならない。こんなこと自分の身に起こったら笑い事ではない。だけどその深刻さへの伊良部先生の対応がやはりおかしい。
3 コンパニオン
誰かに尾行されているに違いないという思い込みから体調を崩した広美が伊良部の元を訪れる。伊良部先生、すこしスケベ心を出して、このタレント志望の女性をボディガードすると言い出す始末。
4 フレンズ
今で言う「スマホ依存症」の話。携帯依存の雄太は、伊良部の元を訪れる。そんな雄太に対して伊良部がとった行動は、やはり突飛なもの。高校生の男子と、肉感的な看護師のマユミの対面する場面がおもしろい。
5 いてもたっても
強迫神経症のルポライター義雄が、伊良部の元を訪れる。相変わらず、伊良部先生の治療とは、とんでもありません。でも、まさかこんな展開になるとは。結局、義雄がすばらしいルポライトをしたことには間違いはありませんから。
松下幸之助さんの言葉
松下幸之助さんの言葉
パナソニック(松下電器産業)を一代で築き上げた松下幸之助さんは、「経営の神様」とも呼ばれ、PHP研究所を設立して倫理教育に乗り出すとともに、「松下政経塾」を立ち上げ、政治家の育成にも尽力したことで有名です。そんな松下幸之助さんの基本理念は、いかに「人を育てる」かであったと、私は考えています。その一端は「 松下電器は人を作るところでございます。」や「企業は人なり。」などの言葉に垣間見られます。松下幸之助さんは、たくさんの名言(格言)を残されていますが、本日は、「自己を成長させる」ために大切な考え方が述べられていると、私が感じている言葉(名言)をいくつか紹介します。
1 人と比較をして劣っているといっても、決して恥ずることではない。けれども、去年の自分と今年の自分とを比較して、もしも今年が劣っているとしたら、それこそ恥ずべきことである。
2 誰でもそうやけど、反省する人は、きっと成功するな。本当に正しく反省する。そうすると次に何をすべきか、何をしたらいかんかということがきちんとわかるからな。それで成長していくわけや、人間として。
3 どんなに悔いても過去は変わらない。どれほど心配したところで未来もどうなるものでもない。今、現在に最善を尽くすことである。
4 わからなければ、人に聞くことである。
5 人の言に耳を傾けない態度は、自ら求めて心を貧困にするようなものである。
人はそれぞれ個性があり、長所もあれば短所もありますが、ややもすると他人と自分とを比べ、自分が今置かれている状況や状態を卑下してしまうこともあるのではないでしょうか。時には、人の揚げ足をとったり、優越感を感じたりするといった、さもしい心が顔を出すことも…。でも松下幸之助さんは言います。人と自分とを比べて何になりますか。大切なのは自分の成長を見つめることですと。そしてそのためにも正しい反省をしなさいと。そして、今を、現在を一生懸命に生きなさい。今できるすべてを出し切りなさいと。「正しい反省」が難しいところです。そのためには、やはり真摯な態度で、相手の話に耳を傾けることが必要なようです。子供たちには、松下幸之助さんの思いを、私なりの言葉で語りかけています。子供たちが自己の成長を実感し、自尊感情を高め、意気揚々と学校生活を送れることを強く願っています。
ちょっと一息(お勧めの1冊)
ちょっと一息(お勧めの1冊)
著書名:『わしらは怪しい探険隊』 作者:椎名誠
●本日「私の薦める1冊」は、椎名誠さんが隊長の「東日本何でもケトばす会」(略称東ケト会)の面々が島に行って、野外でテントを張ってひたすら忍耐生活を送る『わしらは怪しい探険隊』です。●島ならではのトラブル話が面白いとともに、大人が本気で遊ぶことのシリアスさがよく表れています。●それでは、椎名誠さんの『わしらは怪しい探険隊』を紹介します。
●ガキ大将が成人したようなシーナこと椎名誠さんのもとに結成された東ケト会。●いい歳した大人が鍋釜とテントを持って、行き当たりばったりに神島、八丈島、粟島などの離島へ旅に出て、どんちゃん騒ぎの酒盛り大宴会をする。●自然と戯れるというより、自然にやられっぱなしで、あまりかっこよくはないけれども、男達が集まって馬鹿馬鹿しい事を楽しく、時にはうんざりしながらやっている光景がとてもおもしろい。その場に居るような気分になります。●時より挿入される椎名さんの独特な感性も興味をそそられます。例えば、蛇に呑まれる時は、頭から飲まれた方が良いか、足から飲まれた方が良いか、「蛇に呑まれる方法」の持論を展開する場面など。● 宅島では、巡査さんが何かを必死に言っていたのに、適当に聞き流したために朝起きたらテントが水没して、命の危険を感じたという話●神島の蚊の来襲、「蚊柱」と呼ばれる蚊の大群に遭遇した時の緊張感と開き直った時の大胆さ。都会と田舎の蚊の違いについて考察する場面もおもしろい。●神島を一周泳ぐ試みでは「離岸流」に出会い、沖へどんどん流されていくという、笑ってはいられない状況なのに、その必死さに何故かユーモラスさえ感じてしまいます。●椎名さんが、この本を著しているのだから、椎名さんは離岸流を回避し、無事だったのだという読み手の安心からでしょうか。● さらにこの本は、椎名さんの「食」へのこだわりがよく分かる、「食エッセイ」の一面を持ち合わせています。● 現代版「水曜どうでしょう」のようで、気ままな自由人に憧れる人には、特に心地よい作品となるのではないでしょうか。●「沢野ひとし」さんのイラストも良い味をだしています。●少し古い著作とはなりますが、機会があれば、是非手に取ってみてはいかがでしょうか。きっと疲れたときのブレークタイムとして、心にオアシスを与えてくれるはずです。
渋沢栄一さんの言葉(夢七訓)
●渋沢栄一さんの言葉(夢七訓)
●渋沢栄一さんは、開国から昭和初期までの激動の時代において、日本経済の基礎を築き、日本初の銀行を設立しただけでなく、様々な種類の会社設立にも携わった人物です。●渋沢さんの生い立ち、人生については、現在NHKで放映されている「大河ドラマ」で、ご覧になっている方も多いかも知れません。ドラマですので作り手の解釈、視点による脚色はあろうかと思いますが、その人生は農民の生まれから尊王攘夷の運動家、江戸幕府の幕臣、明治政府の官僚、財界を牽引する実業家と、躍進を遂げた人物として有名です。●本日は、その渋沢栄一さんの「夢七訓」を紹介します。「夢七訓」では、「夢」をもつことがいかに大切であるかが語られています。
「夢七訓」
夢なき者は理想なし。
理想なき者は信念なし。
信念なき者は計画なし。
計画なき者は実行なし。
実行なき者は成果なし。
成果なき者は幸福なし。
ゆえに幸福を求むる者は夢なかるべからず。
●「幸せ」な人生は、「夢」をもつところか始まる。だから「夢」をもつことが大切だと渋沢栄一さんは述べています。
●本校の子供たちには、自分がやりたいことを自分で見つけ、自らどんどんやっていて欲しいと常々伝えています。「自分がやりたいこと」、それが「夢」となると考えているからです。●そして、自分がどんなことが出来るようになっていたいかという、1年後の「自分像」を描くことで「理想」をもち、「信念」を抱いていくことの大切さを伝えています。●そしてその実現に向けて努力を続けていくことの大切さと、努力を続けるための秘訣として「いつ、どこで、何を、どれくらい」など、より具体的な目標を立てることの必要性についても伝えています。●子供たちが、「自分像」について、しっかり考え、そのための具体目標の達成状況について、何ができて、何ができていないのか、さらに努力しなければならないことは何かを振り返りながら、今後の生活設計をしっかり立てて欲しいと願っているところです。
緒方洪庵さんの言葉(12戒)
●緒方洪庵さんの言葉
本日は、幕末を代表する医学者であり教育者である、緒方洪庵さんの言葉を紹介します。緒方洪庵さんは、蘭方医学(オランダの医療技術)を学ぶ私塾『適塾』を立ち上げた人物でも有名です。適塾の門下生には、福沢諭吉、大村益次郎、橋本左内など、幕末や明治初年に活躍した人物が多くいます。
緒方洪庵さんは、フーフェランド教授の内科書の巻末に記された“医師の義務“を愛弟子に伝えるべく、これを抄訳し12か条の医戒(「扶氏医戒之略」)を著わしました。
原文は理解が難しいところがあるとともに、医者としての心構えが述べられていますが、この12戒の根底にあるのは「仁」の心であろうと考え、私なりに一般論として解釈した12か条を書かせていただきます。
1 名声や利益、安楽な生活を求めるのではなく、人のために生きなさい。
2 人は貧富差の差で差別されるべきではない。
3 常に謙虚な心を持ち、相手を大切にしなさい。
4 流行に流され、本質を見誤ってはいけない。
5 自分の言動を振り返り、整理することは大切である。
6 自尊心を強く持ちすぎて、人の好き嫌いをしてはいけない。
7 苦しく、厳しい状況下であっても、万策尽きるまで努力しなければならない。
8 相手の置かれている状況を理解し、その状況にふさわしい対応をしなければならない。
9 人に信頼されるよう、常に篤実温厚を旨として生きなければならない。
10 相手の過ちを非難してはいけない。それは自分自身の人格を損なう行為である。
11 情報収集する際は、目的に照らして正しい情報を集める工夫をしなければならない。
12 相手が過ちを犯しているときは、それに対して意見しなければならない。
緒方洪庵さんは、門人の福沢諭吉さんに「類まれなる高徳の君子」と呼ばれたように、とても優しい心をもった医師であり、つねに他人のために生き続けた人であったようです。現在、個人主義的な考え方、生き方が世の中にはびこり、寛容さとか優しさとか、人のために社会のためにと言った生き方が薄らいでいるように感じているのは、私だけでしょうか。私のような凡庸なものには、緒方洪庵さんのような高潔な生き方は難しいところではありますが、真に美しい人生というのは他人のためにつくした人生なのだと、改めて気づかされるのです。
【参考資料:原文「扶氏医戒之略」】
1 医の世に生活するは人の為のみ、おのれがためにあらずということを其業の本旨とす。安逸を思はず、名利を顧みず、唯おのれをすてて人を救はんことを希ふべし。人の生命を保全し、人の疾病を復治し、人の患苦を寛解するの外他事あるものにあらず。
2 病者に対しては唯病者を見るべし。貴賤貧富を顧ることなかれ。長者一握の黄金を以て貧士双眼の感涙に比するに、其心に得るところ如何ぞや。深く之を思ふべし。
3 其術を行ふに当ては病者を以て正鵠とすべし。決して弓矢となすことなかれ。固執に僻せず、漫試を好まず、謹慎して、眇看細密ならんことをおもふべし。
4 学術を研精するの外、尚言行に意を用いて病者に信任せられんことを求むべし。然りといへども、時様の服飾を用ひ、詭誕の奇説を唱へて、聞達を求むるは大に恥るところなり。
5 毎日夜間に方て更に昼間の病按を再考し、詳に筆記するを課定とすべし。積て一書を成せば、自己の為にも病者のためにも広大の裨益あり。
6 病者を訪ふは、疎漏の数診に足を労せんより、寧一診に心を労して細密ならんことを要す。然れども自尊大にして屡々診察することを欲せざるは甚だ悪むべきなり。
7 不治の病者も仍其患苦を寛解し、其生命を保全せんことを求むるは、医の職務なり。棄てて省みざるは人道に反す。たとひ救ふこと能はざるも、之を慰するは仁術なり。片時も其命を延べんことを思ふべし。決して其不起を告ぐべからず。言語容姿みな意を用ひて、之を悟らしむることなかれ。
8 病者の費用少なからんことを思ふべし。命を与ふとも、其命を繋ぐの資を奪はば、亦何の益かあらん。貧民に於ては茲に斟酌なくんばあらず。
9 世間に対して衆人の好意を得んことを要すべし。学術卓絶すとも、言行厳格なりとも、斎民の信を得ざれば、其徳を施すによしなし。周く俗情に通ぜざるべからず。殊に医は人の身命を依托し、赤裸を露呈し、最密の禁秘をも白し、最辱の懺悔をも状せざること能はざる所なり。常に篤実温厚を旨として、多言ならず、沈黙ならんことを主とすべし。博徒、酒客、好色、貪利の名なからんことは素より論を俟ず。
10 同業の人に対しては之を敬し、之を愛すべし。たとひしかること能はざるも、勉めて忍ばんことを要すべし。決して他医を議することなかれ。人の短をいうは、聖賢の堅く戒むる所なり。彼が過を挙ぐるは、小人の凶徳なり。人は唯一朝の過を議せられて、おのれ生涯の徳を損す。其徳失如何ぞや。各医自家の流有て、又自得の法あり。漫に之を論ずべからず。老医は敬重すべし。少輩は親愛すべし。人もし前医の得失を問ふことあらば、勉めて之を得に帰すべく、其治法の当否は現病を認めざるに辞すべし。
11 治療の商議は会同少なからんことを要す。多きも三人に過ぐべからず。殊によく其人を択ぶべし。只管病者の安全を意として、他事を顧みず、決して争議に及ぶことなかれ。
12 病者曽て依托せる医を舎て、窃に他医に商ることありとも、漫りに其謀に与かるべからず。先其医に告げて、其説を聞くにあらざれば、従事することなかれ。然りといへども、実に其誤治なることを知て、之を外視するは亦医の任にあらず。殊に危険の病に在ては遅疑することあることなかれ。