2021年7月の記事一覧
ちょっと一息(お勧めの1冊)
ちょっと一息(お勧めの1冊)
著書名:『わたしを離さないで(Never let me go)』 作者名:カズオ・イシグロ
●本日は、カズオ・イシグロさんが著した『わたしを離さないで(Never let me go)』を紹介します。ノーベル文学賞を受賞した作家であり、2011年に映画化もされているので、ご存知の方も多いかも知れません。長編となりますが、私のお気に入りの1冊ですので、ご紹介いたします。
●「ヘールシャム寄宿学校」に隠された奇妙な真実が「キャシー・H」という女性によって語られます。ルースやトミーとの忘れ得ぬ思い出の物語です。●キャシーは「介護人」として働き、年若くしてその職を辞そうとしています。●イギリスの曇天を想起させる、おそらくは寒々とした片田舎を舞台に、こども時代を回想する当たり前の始まりが、胸をえぐられるような結末になろうとは想像もできません。●ヘールシャムの描写、その思い出は、行ったことも、見たこともない場所ですが、なぜか郷愁の念を感ぜずにはいられません。しかしながら結末を迎え、改まってヘールシャムの美しい思い出の地を思うと、恐ろしささえ漂ってきます。●本作品は、過去のキャシーとともに、隠されていた真実を探す「旅」なのです。●正しいのはルース先生かエミリ先生なのか。はたして徐々に運命が明らかになるという方法は「提供者」を幸せにするのでしょうか。●コテージで自発的に「介護者」になる道を選択させるしくみは残酷ではないでしょうか。●ノーフォークへの小旅行のエピソードで、いよいよ隠された秘密の確信が明確になってきます。私たちは、その真実に気付き始めたとき、心を痛めずに先を読み進めることなどできないはずです。●キャシーの語りは常に淡々としていています。そして何気ない会話や動作に潜む相手の心を的確に捉えます。しかし決して無感情なのではなく、むしろそこには「最期」という瞬間を起点に、「生」を見つめる眼差しが感じられます。過ぎ去っていく者たちへの愛情すら垣間見られます。●登場人物たちの微妙な心理の揺れ動きが、細やかに描かれた作品です。●抗えない運命、そして置かれた状況を受け入れて過ごす日々、自分や他人の感情の起伏に戸惑いつつも愛することの希望を失わない、そんな姿が静謐なタッチで生き生きと描かれています。●はたして「介護人」とは「提供者」とは、どんな意味をもつ「ことば」なのでしょうか。ぜひ、その謎解きをしてみてはいかがでしょいうか。
イチローさんの言葉
●鈴木一郎(イチロー)さんの言葉
●本日は、プロ野球で大活躍をしたイチローこと「鈴木一郎」さんの言葉を紹介します。●鈴木一郎さんの業績、そして日本球界をはじめメジャーリーグに刻んだ燦然たる記録については、私から改めて申し上げることもないでしょう。●鈴木一郎さんのことを「天才」と称する方々も多くいられますが、そんな称賛の言葉に対して鈴木一郎さんは、「自分の可能性を信じ、夢をもち、それを目標に変えて、日々、努力してきた結果が今である。努力した結果、何かができるようになる人のことを『天才』というのなら、僕はそうだと思う。」と応えています。●そんな、鈴木一郎さんの言葉から、本日は、目標を達成させる(努力し続ける)ためのヒントとなる言葉を紹介します。
1 夢は近づくと目標に変わる
2 夢や目標を達成するには1つしか方法がない。小さなことを積み重ねること
3 今、自分にできること。頑張ればできそうなこと。そういうことを積み重ねていかないと遠くの目標は近づいてこない
4 ここまで来て思うのは、まず手の届く目標を立て、ひとつひとつクリアしていけば最初は手が届かないと思っていた目標にもやがて手が届くようになる ということですね
5 高い目標を成し遂げたいと思うなら、常に近い目標を持ちできればその次の目標も持っておくことです。それを省いて遠くに行こうとすれば、挫折感を味わうことになるでしょう。近くの目標を定めてこそギャップは少ないし、仮に届かなければ別のやり方でやろうと考えられる。高い所にいくには下から積み上げていかなければなりません
6 苦しみを背負いながら、毎日小さなことを積み重ねて、記録を達成した。苦しいけれど、同時にドキドキ、ワクワクしながら挑戦することが勝負の世界の醍醐味
7 そりゃ、僕だって勉強や野球の練習は嫌いですよ。誰だってそうじゃないですか。つらいし、大抵はつまらないことの繰り返し。でも、僕は子供のころから、目標を持って努力するのが好きなんです。だってその努力が結果として出るのは嬉しいじゃないですか
8 努力せずに何かできるようになる人のことを『天才』というのなら、僕はそうじゃない。努力した結果、何かができるようになる人のことを『天才』というのなら、僕はそうだと思う。人が僕のことを、努力もせずに打てるんだと思うなら、それは間違いです
9 アップの時には全力で走るとか、早く来て個人で練習しているとか、そんなことは僕にとって当たり前のこと
●鈴木一郎さんは、夢をもつこと、その夢に向かって何事も前向きに行動することで可能性が生まれ、それが現実的な目標となる。そして、その目標を達成させるためには、スモール・ステップが重要で、目の前の小さなことから、こつこつと努力を積み重ね、次のステップへと進めていく。努力をすることは、時に苦しみを感じるけれども、それにワクワクしながら挑戦し続けることが大切だと述べています。●鈴木さんの、「僕は子供のころから、目標を持って努力するのが好きなんです。だってその努力が結果として出るのは嬉しいじゃないですか。」の一言に、日本球界ばかりかメージャーリーグでも名の残す名選手の一人となった、そんな成功の秘訣があるのだと改めて感じました。●子供たちが自分の「夢」や「目標」を実現させられるよう、子供たちが目の前にある、今できること、やらなければならいことに気付けるよう、私たち大人が声をかけ、支えていく必要があるのだと感じています。
ちょっと一息(お勧めの1冊)
ちょっと一息(お勧めの1冊)
著書名:『そこに僕はいた』 著者名:辻仁成
●本日は、辻仁成さんが少年時代に出会った人々、友人との出来事を18編のエッセイにまとめた『そこに僕はいた』です。●「少年、辻仁成さん」の心の揺れ動き、そして内面的な成長の過程が描かれています。●作品を読みながら、思わずにやけたり、恥ずかしくなったりするような出来事を思い出すかも知れません。例えば、好きな女の子に嫌がることばかりしてしまったこと、好きな女の子のことばかり考えて過ごしたこと、またマドンナに憧れたことなど、異性への淡い思い出が皆さんにもありませんか。●思春期を迎えた男の子の心と体のアンバランスさ、心理状況についてもユーモアを交えた軽快なタッチで描かれています。●さらに高校時代の若者が抱く夢や不安についても、多くの高校生の気持ちを代弁しているかのようです。●私が本著で最も好きな章は、著書名ともなっている「そこに僕はいた」です。僕(辻仁成さん)が小学校3年生の頃に出会った、片足のあーちゃんとの関わりを書いた章です。僕を取り巻く心ない大人たちの言葉、あーちゃんとのエピーソード、そんな出来事を通しながら、僕の気持ちの変化や心の成長が巧みに表現されています。辻仁成さんの鋭い感性と優しさが伝わってきます。●本著は、皆さんにとって、小学生や中学生、高校生時代を懐かしむことのできる1冊となります。自分の少年時代を思い出し、郷愁に耽る時間をもつことは、多忙な毎日の清涼剤となることでしょう。
大岡信さんの言葉
●大岡信さんの言葉
本日は、詩人の大岡信さんの言葉を紹介します。大岡信さんと言えば、28年の長き渡り、朝日新聞の朝刊に連載したコラム『折々のことば』が有名です。私は、毎朝、大岡さんの『折々のことば』に目を通すのが日課でしたので、大岡さんが亡くなられ今、それがかなわないことが残念です。本日紹介する言葉は、中学校2年生の国語科教科書に掲載された『言葉の力』からです。
『言葉の力』から
人はよく美しい言葉、正しい言葉について語る。しかし、私たちが用いる言葉のどれをとってみても、単独にそれだけで美しいと決まっている言葉、正しいと決まっている言葉はない。
ある人があるとき発した言葉がどんなに美しかったとしても、別の人がそれを用いたとき同じように美しいとは限らない。
それは、言葉というものの本質が、口先だけのもの、語彙だけのものだはなくて、それを発している人間全体の世界をいやおうなしに背負ってしまうところにあるからである。
●大岡信さんは、京都の嵯峨に住む染織家志村ふくみさんとの会話から、桜の花びらのピンクは、実は、木全体(桜は、春先になると幹や樹皮、樹液までがピンクとなる)で懸命になって最上のピンクの色を作り出し、ほんの先端だけその姿を出していることを教えられます。つまり、私たちの限られた視野の中では、桜の花びらに現れ出たピンクしか見えませんが、木全体の一刻も休むことのない活動の精髄によってあのピンクが現れているのです。●大岡さんは、この話から「言葉」も実は桜の花びらのピンクと同様に、美しい言葉、正しい言葉とは、表面的な美しさや正しさではなく、それを発した人の思い、気持ち、その基盤となる人間性によるものだと述べています。●私たちは、一語一語のささやかな言葉のささやかさ、そのものの大きな意味を実感していく必要があるようです。●そのためにも、たった一つの言葉を発するにも長い時間をかけ、時に我慢をする覚悟が必要です。●美しい言葉、正しい言葉というものは、その言葉を発する人の芯(幹)が美しく、正しくなければ、美辞麗句としかなり得ないからです。●このことは、私たち人間が、「言葉」の世界を背負っていると言っても過言ではないということです。●大岡信さんの『言葉の力』に触れ、改めて「言葉」の重み、大切さを感じています。
徳冨蘆花さんの言葉
本日は、明治時代から大正時代にかけて小説家として活躍した徳冨蘆花さんの言葉を紹介します。徳富蘆花さんは、『不如帰(ほととぎす)』を著し、当時の大ベストセラー作家の一人でした。そんな徳冨蘆花さんが、「欠点(短所)」について述べた次の言葉は、私たちの生き方のヒントになるかも知れません。そんな言葉を紹介します。
欠点は常に裏から見た長所である。
徳冨蘆花さんは、「欠点(短所)と感じていることも、見る人が異なれば、それが長所となり得る。」と行っています。つまり、欠点(短所)も、時が変われば、場所が変われば、そして人が変われば、長所となり得るということです。つまり、自分が短所と感じていることが、相手によっては、なくてはならない長所になるかも知れないということです。そう考えると、私たちは、自分が感じている「長所」に自信を持ち、それをひたすら伸ばす努力をすれば良いのだし、「欠点(短所)」だと考えていることは、今はそのままにしておいて、無理に直そうとする必要もないのです。その「欠点(短所)」が素晴らしい、いいねと言ってくれる相手が、気づかせてくれる友達が現れたら、自分の「欠点(短所)」について、もう一度考え直してみるという生き方も良いのかもしれませんね。
ちょっと一息(お勧めの1冊)
ちょっと一息(お勧めの1冊)
著書名:『源実朝』 作者名:吉本隆明
本日は、批評家である吉本隆明さんが著した『源実朝』を紹介します。この本に出会うまで、私が「源実朝」について知っていたことは、中学校の社会科で習った「鎌倉幕府の3代将軍であった源実朝は、公暁(2代将軍頼家の子)に鶴岡八幡宮で暗殺されました。27歳という若さでした。そのときの執権、北条義時の策略によるものです。」この程度でした。しかしこの著書に触れたことにより「史実としての実朝像」が明確となりました。吉本隆明さんは、『愚管抄』や『吾妻鏡』の内容を踏まえ、時に引用しながら、「何故、実朝は暗殺されなければならなかったのか」を史実に沿いながら、丁寧かつ明確にその答えを導き出しています。もちろん父である「頼家」が、伊豆修善寺で、北条時政の刺客によって惨殺された背景についても解き明かされます。また、私は、「鎌倉幕府を開いた源頼朝の子(頼家)、孫(実朝)が、何故、北条氏によって殺されなければならなかったのか。何故、時代はそれを許したのか。それだけ頼朝の妻である北条政子の影響力は絶大であったのか。」という疑問をかねてから抱いていましたが、この著書により、「封建社会(国家)における家長制度の変遷」にその答えがあったことも明らかとなりました。当時の社会情勢をはじめ、この時を生きた人々の息吹、そして「源実朝像」が浮き彫りにされた本著は、歴史が好きな方には、ぜひお薦めした1冊です。また、「源実朝」は後世に名を残す『金槐和歌集』を編纂した人物(天才的歌人)としても有名です。吉本隆明さんは、「実朝」と和歌についても詳細に分析をしています。『万葉集』や『古今和歌集』など和歌集をふまえながら、「実朝」の歌には独特な心が表れていると評価しています。和歌に詠まれた事物や心情から、日本人の感性の変遷にも触れていますので、和歌に興味がある方にもお薦めです。鎌倉の寿福寺には「源実朝」のお墓があります。「乳房吸ふまだいとけなきみどり子の共になきぬる年の暮かな」という歌を詠んだ「実朝」の心の悲しみに触れてみてはいかがでしょうか。
橋本左内さんの『啓発録 五訓』
橋本左内さんの『啓発録 五訓』
橋本左内さんは、小さい頃から、「自分に足りないもの何か、弱点は何か、そのためにはどう改善したら良いか。」と考えながら、自己の存在を客観的に分析した人物のようです。そして十五歳の時に、自分自身の人生訓として、これから立派な大人になるための心得を「啓発録」として書き上げました。本日は、「啓発録」の五つの教訓を紹介します。
啓発録 五訓
1 「稚心を去る」
2 「気を振う」
3 「志を立つ」
4 「学を勉む」
5 「交友を択ぶ」
●「 稚心を去る」ですが、「稚心」とは子どもっぽい心のことです。橋本左内さんは「自分とその運命を変えようと思うなら、結局、自分の手で何とかする以外に方法はない。」と語り、親への依存心、子どもっぽい遊びと決別し、己を研鑽することを誓います。●「気を振う」とは、とにかく他人に負けるなということです。他の人にできるなら、己にもできるはずだということです。どんな困難にも真摯に立ち向かおうとする橋本左内さんの決意が表れています。●「志を立つ」とは、自分の人生の目標を決めるということです。先人、偉人の生き方、言葉を習い、それを学び、自分に足らないものを埋めていく大切さが述べられています。●「学に勉む」は、立派な人物の行いを学び、親孝行するとともに、人生の目標を達成するまで常に学び続けること、それを世の中のために正しく生かすことを橋本左内は誓っています。●「 交友を択ぶ」は、互いに切磋琢磨できる良き友を選ぶことが必要だと言っています。自分を高めて、心から尊敬でき、何かあった時に、真剣に心配してくれる友達こそ、何よりも大切なのです。また、その友人が間違った道に行ってしまったら、それを正しい道に引き戻すのも使命であると書いています。
●橋本左内さんは、十五歳という人生の節目に立てたこの誓いを守り、短い人生ながらも素晴らしい人材として、教育や政治に大きな成果を残しました。
井深大さんの言葉
井深大(いぶかまさる)さんの言葉
本日は、日光市出身の電子技術者であり、実業家である井深大さんの「若者」に向けたメッセージを紹介するとともに、家庭教育の大切さについて述べた言葉を紹介します。井深大さんは、盛田昭夫さんと共にソニーの創業者の一人として知られる方です。井深大さんは発明の才に恵まれた人物で、大学在学中にパリ万博で優秀発明賞を受賞しています。テープレコーダーやトランジスタラジオの開発に始まり、「ウォークマン」を大ヒットさせたことは有名です。
若い方々にぜひ伝えたいことが、 二つあります。
1 自分自身を大切にすること、自分を生かすということと合わせて、それと同じくらいのウエイトで、他人のために、社会のために何かできることはないか、ということを考えていただきたい。また、そういう気持ちを、ぜひ持っていただきたいということです。
2 しっかりした生きるよりどころを、ぜひ持ってもらいたいということです。
●「自分自身を大切にする」、「自分を生かす」ためには、自尊感情を高め、自己の存在意義に気づく必要があります。そのためには成功体験が必要となります。「~をしたい。」、「~を目指す。」と言った思いを達成する体験の積み重ねや承認されるという経験があって、初めて自分に自信が持て、自信が持てれば自分の良さにも気づくことができると考えるからです。しかし、より自尊感情を高め、自己の存在意義を見出すためには、失敗を繰り返しながらも、その状況にくじけず、粘り強くやり通した結果の上で得られた成功体験とそれを認められることが必要ではないでしょうか。産みの苦しみから生まれた成功体験は、大きな自信と自分の良さに気づくきっかけとなるからです。「失敗は成功のもと」という諺にあるように、このことについては、多くの先人、偉人の名言の中にも見られる考え方です。井深さんも「トライ・アンド・エラーを、 繰り返すことが経験、蓄積になる。 独自のノウハウはそうやってできていく。」という言葉を残しています。
●そして、井深さんは、「自分を大切にする」と同様に、「他人を社会を大切にする」ことが重要だと述べています。「他人のために、 社会のため」に何かをしようとする思いを持つ必要性についても、多くの先人、偉人が述べているところです。人は一人だけでは生きていくことはできません。家族があり、身内があり、地域があり、そしてそういう集団の集合体として「社会」があるのです。互いに相手を認め、尊重し、そして協力し合ってこそ、「社会」という共同体は、初めて機能するのです。そこに自己の存在意義を見出す大切さが語られているのではないでしょうか。
●また、井深さんは「自分を大切にし、自分を生かし、そして他人や社会のために生かす」ためには、「しっかりした生きるよりどころ」を持つ必要があると述べています。子供たちは、その「生きるよりどころ」をどこから見つければ良いのでしょうか。井深さんは、それは身近な大人、特に親の生き方だと述べています。井深さんが残した別の言葉には、
・人間として守らなければならないことは、親がいつも率先してお手本を示しながら、子どもにも守らせること。理屈でなく行動で教えること。
・0歳から始まる、よい習慣のくり返しだけが、人間をつくる最大条件であろう。しかも、親の意識と努力と忍耐だけが、それを可能にするのである。
・両親がひたむきに生きる姿自体が、どんな幼い子にも、素晴らしい影響を与えるのです。
・多くの場合、1歩先を歩む身近な先達は、子どもの成長進歩にとって教師よりも大きな刺激となる。親が先達の1人として、子どもの好ましい競争者になりえたら、それに勝る教育法はないだろう。
・立派な人間になるための一つの条件は、 自分が心から尊敬できる人を持つこと。
●などがあります。今まで、幾人かの先人、偉人の言葉を紹介してきましたが、その語る真義は、どこか似ているところが多くあると感じているところです。
ちょっと一息(お勧めの1冊)
ちょっと一息(お勧めの1冊)
著書名:『ライ麦畑でつかまえて』 作者名:J.D.サリンジャー
●本日は、J.D.サリンジャー(アメリカ合衆国)の『ライ麦畑でつかまえて』を紹介します。●この本は、全世界で6000万部以上を売り上げ、現在でも毎年約50万部が売れていると言われています。●この小説がこれだけ世界的にヒットしているということは、社会の不条理さに憤り、大人になることへの抵抗を抱くホールデン・コールフィールド(主人公)の言動に共感する人がそれだけいるからではないでしょうか。●誰しも他者を嫌悪し、自分を嫌悪し、これと言った明確な理由もなく苛立ち、何もかににも抵抗したくなるような気持ちで過ごした、そん思春期と呼ばれる時期があったろうと思います。●正にホールデンは、思春期の真っ最中の16歳。●自分の周りにはびこる違和感(欺瞞、無神経、虚偽、虚飾など)に怒り、憎悪し、抵抗して、失望する。そでもなお、他人を求め、救いを期待するという内容が、彼の目線で描かれた書簡体小説となって描かれています。●多くの人が10代の頃に持っていた若々しさを余すことなく閉じ込めた、そんな青春文学です。
●それでは、簡単なあらすじを紹介します。●成績不振によりホールデンに、在籍している名門私立高校を放校処分(退学)となる決定がおります。●ホールデンは、先生や寮の仲間と良い関係を築こうと努力をするのですが、周囲の人間の理不尽さにうんざりしてしまい、追い出される前に学校(寮)を飛び出してしまいます。●ホールデンは、両親に高校を放校処分となったことを伝えることができません。●自宅のあるニューヨークには戻りますが、自宅に戻ることができず、ホテルを転々とする放浪生活を始めます。●ホールデンいわく、ニューヨークは「インチキで汚い世界」でした。●その醜さと孤独に絶望し、退廃した生活を送るのですが、そんな生活の中でも、どこか他者を求め続けるホールデンがいるのです。●思春期特有の他人に対して見栄を張りたい、そして虚偽を憎み真実を愛するといった、二つの気持ちの間でホールデンの心は揺れ動き続けます。●そんなホールデンにとって、二人の修道女との出会いは、自己の存在価値を見出すきっかけとなります。●そしてホールデンは、目先の利益と無関係に生きている者たちの世界に希望を見出し、自分もそこの住人になりたいと考えます。●しかし、現実社会は、相変わらず目先の利益を追い求める人々ばかりです。そんな人々の多さに、ホールデンは、再び辟易してしまうのです。●そんな社会に生きづらさとあきらめを感じてしまったホールデンは、己の憧れる純粋無垢な世界で生きるために、人里を離れ、口がきけない、耳も聞こえない者ととして一生暮らして行こうと決意するのです。
●「嫌悪」、「憎悪」、「退廃」などといったキーワードが出てくる作品ではありますが、全体的に透明感が漂い、軽やかなリズムを感じる作品となっています。●ホールデン・コールフィールドという主人公が持つキャラクター性によるものからでしょうか。●私は、大学生の時にこの本を読みました。●ホールデンの内面の葛藤を理解できると感じる反面、現実社会の様々な不合理に対して、適当に折り合いを付けてなんとか上手く生活している自分の存在を痛感しました。●自分には今の生活を捨てる勇気などないので、ホールデンのような生き方に一種の憧れを抱き、押さえがたき震えを覚えたことを鮮明に記憶しています。●一方、折り合いを付けながら生きているそんな自分への安心感という相反する感情が、そのときになぜか湧き上がりました。●20歳という思春期を過ぎてから、『ライ麦畑でつかまえて』を読んだからでしょう。●『ライ麦畑でつかまえて』は、1951年に書かれた作品ですが、青春時代の葛藤はいつになっても決して色褪せません。●皆さん、かつての青春時代を垣間見るのも一興です。手に取ってみてはいかがでしょうか。
橋本左内さんの言葉
橋本左内さんの言葉
本日は、幕末時代の天才と称された橋本左内さんの言葉を紹介します。橋本左内さんは、子供の頃から頭脳明晰で「神童」と呼ばれた人物です。以前に紹介した緒方洪庵先生の適塾で学び、吉田松陰、西郷隆盛、藤田東湖らとの交流もありました。また、15歳で書いたとされる「啓発録」は現在も読まれています。「啓発録」は立志式の由来となっています。橋本左内さんは、安政の大獄の際、将軍継嗣問題に介入したことで斬首刑となり、26歳の若さで亡くなりました。そんな人生の大半を学問そして武道に励んだ橋本左内さんの「志(夢をもつ)」を立てることの大切さを述べた言葉を本日は紹介します。
志(夢をもつ)を立てる
1 偉人の経歴を読書により知って憧れること
2 師や友から聞いたことに発憤すること
3 自分が逆境に陥ったときに勇猛心を起こすこと
4 感激すること
の四つが志を立てる大きな理由となる
●現在は、AI時代が到来し、今まで通用していた常識や価値観が新たなものへと転換している、そんな変化の激しい時代となっています。今後は、さらに複雑化・多様化した予測困難な未来となるでしょう。●こんな新しい時代を生きている子供たちにとって「志(夢)」をもつことは、今まで以上に難しいものとなっています。●「夢」がない(もてない)と応える子供たちが増えてきていますが、「夢」をもてと言われても、簡単にもてないのは、ある面仕方ないことなのです。●しかし、多くの先人たち、偉人たちの言葉に見られるように、幸福になるために、自己を成長させるために、努力する力をもつためにも、「志(夢)」をもつことは大切です。●今こそ、子供たちには、「志(夢)」をもつためのヒントを示さなければならないのです。●橋本佐内さんは「志(夢)」をもつためのヒントとして、私たちの日々の生活(行為)の中から「志(夢)」は自然に生まれるものだと言っています。●一つ目として、先人、偉人の残した本を読み、その考え方や生き方に憧れを抱くことが「志(夢)」をもつ機会となると述べています。若者の読書離れが叫ばれる昨今ですが、やはり読書習慣を身に付けることは大切なのです。●二つ目は、親や先輩、友人から語られる言葉に耳を澄ますことで、勇気づけられ、「~をやりたい。~になりたい。」という気持ちが湧き上がってくると言っています。私たち大人が子供たちに、未来を夢見ることができる言葉を投げかけることは重要なのです。●三つ目は、辛く、苦しい状況になったときに、そこから抜け出すための強い心をもつ必要があると述べています。人間いざとなれば、奮起しなければいけないときがあります。そんな時の、もがきの中から考えたこと、行ったこと、あるいは周囲の人の手助けが夢につながると橋本さんは言っています。「志(夢)」をもつためには、粘り強さとか忍耐力といった人間性も育んでいかなければならないのです。●四つ目は、日々の生活の中で体験する様々出来事から「感動」を覚えることです。ここで大切なことは、その体験を振り返り、何が自分の心の中で起きたのか、何に感動したのか、その体験は自分にとってどのような意味をもつのか、などを考えることです。そのことで「体験」を「経験」へと昇華させ、初めて「感動」が「志(夢)」へとつながるのです。●橋本佐内さんのいう四つの教訓は、普段の生活の中で、子供たちが経験ができるものばかりです。子供たちが「志(夢)」をもつ機会を増やすことができるよう、周囲の大人の関わり方が大切なのだと感じています。
※橋本左内さんの「啓発録 五訓」については、機会がありました後ほど紹介いたします。
ちょっと一息(お勧めの1冊)
ちょっと一息(お勧めの1冊)
著書名:『遠野物語』 作者:柳田國男
●本日は、「日本民俗学」という新しい学問をつくった柳田國男さんの『遠野物語』を紹介します。●柳田さんは、幼いときから優れた記憶力を持ち、学校の成績も非常に優秀だったようです。●柳田さんの「日本民俗学」の原点は、自らが幼少期に体験した飢饉体験や故郷を離れて見聞きした庶民の暮らしや間引き慣習の悲惨さだったようです。●生活の中で生き続ける行事や昔話、伝承などを記録することの重要性に誰よりも早く気付き、それを後世に記録として残すという使命感をもって研究を進めた人物です。●『遠野物語』は、ザシキワラシやカッパ、神隠し、姥捨てなど、柳田さんの故郷である岩手県遠野に伝わる伝承を記録したものです。神への畏怖と感謝、祖霊への思いなど、日本人の死生観や自然観が凝縮された作品です。●作品には、田植えを手伝う神の話もあれば、子殺しの話など怖い話もあります。日本人の暮らしを、負の部分も含めて記録しているのが遠野物語の特徴です。それでは、いくつかのネタばらしを…。
●「ザシキワラシ」は、ザシキワラシが家を出たため、一家が毒キノコを食べて亡くなってしまう話です。ただ神から特殊な能力を授けられていた少女だけはひとり生き残ります。遠野の人々が神々とつながっていたことが語られた記録です。●「大津波」では、生きのこった男が亡くなったはずの妻に出会ったり、「戦地にいる兄」では、側にいるはずのない兄が現れたりという出来事が語られています。昔の遠野では、生と死の境界は曖昧で、行ったり来たり出来るものだったようです。このような臨死体験の話などには、そうした死生観が凝縮されています。●「オオカミと人間との戦い」は、オオカミの子を殺したため、怒った母オオカミが村の馬を殺すようになったという話です。自然界には、人間が立ち入ることのできない自然界ならではの掟があるのです。「自然への畏敬の念」そして「自然との共生」を図る人々の姿が描かれています。
●柳田國男さんの『遠野物語』には、「河童」、「オシラサマ」、「山男」、「マヨイガ」、「雪女」、「神隠し」など、怪異談が全部で119話が収められています。●身近な山や自然の霊的な存在、家の中に住む神様、自然の中に暮らす動物たちを主人公とした、古くから言い伝えられた多数の物語です。●自然への崇拝を忘れることなく、自然と上手に折り合いをつけながら暮らす遠野の人々の情感あふれた記録です。●私がこの作品を読んだのは、大学生の時です。ゼミの教授から薦められました。「恐れ(畏怖)」という感動を覚えたことを鮮明に記憶しています。●大学生であった30数年前、自ら運転する自家用車で遠野を訪れ、『遠野物語』の世界を自ら辿ったことも忘れることができません。●作品は文語体ですが、短編の話ですので、興味のある方は手に取ってみてはいかがですか。
内村鑑三さんの言葉
内村鑑三さんの言葉
内村鑑三さんは、日本のキリスト教思想家、文学者です。明治初期に活躍し、キリスト教徒でありながら無教会主義を唱え、日本の近代思想にも大きな影響を与えました。本日は、そんな内村鑑三さんの名言を紹介します。
1 一日は貴い一生である。これを空費してはならない。
2 喜びの声を発すれば喜びの人となり悲しみの声を発すれば悲しみの人となる。
3 他の人の行くことを嫌う所へ行け。他の人のいやがる事を為せ
4 誠実から得た信用は最大の財産となる。
5 学は貴し。されども精神の貴きに如かず
6 後世へ遺すべき物はお金、事業、思想もあるが誰にでもできる最大遺物とは勇ましく高尚なる生涯である。
内村鑑三さんは、誰もやりたがらないような、辛く、苦しく、きついことを率先して行うことが大切だと述べています。また誠実な生き方や清らかな精神を尊ぶ、慈愛ある生き方を求めています。欲望の塊のような私には、耳が痛くなるような言葉ばかりです。子供たちの成長を願い、一日一日を大切にして、喜びの声を発し続けることにより、高尚な生涯は無理としても、「誠実」に、そして「謙虚」の言葉を忘れずに生きたいと感じたところです。
立花隆さんの言葉
立花隆さんの言葉
先週末の「NHKクローズアップ現代」で、今年4月に80歳で亡くなられた、立花隆さんのことを取り上げていました。立花隆さんは、3万冊もの本を読み、綿密な取材を基に100冊以上の本を執筆するなど、「知の巨人」と称された人です。理系・文系という垣根を越え、縦横無尽に活動してきた立花さんは、次世代の若者たちに向けた「どう生きるか」という問いかけを数多く残しています。本日はそのいくつかを紹介いたします。
生き方の10箇条
1 ナイーブさと賢さを同時に持て
2 ニッチを発見せよ
3 自分の欲求と能力を知るべし
4 価値体系が「自分」を作る
5 世俗的な成功を求めるな
6 生き方の美学を作れ
7 バックグラウンドを踏まえてものを見よ
8 人生の残り時間を意識せよ
9 走って走って走り続けろ
10 失敗は必ず起こる。それを隠さず、それに負けない強さを持て
α 人から見られているという意識を持て
β 他人を恐れるな
γ フロンティアへ飛び出せ
立花さんの若者へ発せられたメッセージはいかがだったでしょうか。一言で言い換えると、「謙虚な姿勢」、「自分の存在価値」、「自己の夢と能力」、「自ら歩む人生そのもが「自分」」、「大志」、「生き方の美学」、「多面的・多角的」、「限りある時間」、「継続」、「真摯さと粘り強さ」というところでしょうか。また「恥」と「信念」と「開拓精神」が付け加えられています。もちろん「知の巨人」の思いは、こんな簡単な一言では言い表すことのできません。興味のある方は、是非、立花隆さんの著書に触れてみてはいかがでしょうか。
ちょっと一息(お勧めの1冊)
ちょっと一息(お勧めの1冊)
著書名:『団栗』 作者:寺田寅彦
●本日は、明治38年「ホトトギス」に掲載された、寺田寅彦さんの随筆「団栗(どんぐり)」を紹介します。●寺田寅彦さんは、日本を代表する物理学者のひとりですが、随筆を著す才にも長けていると評価された人物です。●また夏目漱石の門下生で、漱石の『吾輩は猫である』の水島寒月や『三四郎』の野々宮宗八のモデルとしても有名です。●『団栗』に綴られた文章は平明で分かりやすく、妻や子、そして下女(美代)へ注ぐ愛情が随所に表れています。●作品のあらましは、嬉しそうにどんぐりを拾っている忘れ形見の娘の姿から、結核を患い若くして亡くなった妻「夏子」とのやりとり、そのしぐさに思いを馳せるという作品です。●4ページほどの短い随筆で、事実を事実として、客観的にそして淡々と語った作品ですが、それがかえって、内容と伴って一層の切なさを醸し出しています。●「どんぐりを拾って喜んだ妻も今はない。お墓の土には苔の花がなんべんか咲いた」。●なんと感傷的で流麗な表現ではないでしょうか。妻が亡くなってから幾年か立っている情景がさりげなく語られています。「苔」ではなく「苔の花」と表したところにも、季節の移り変わりが味わい深く表現されています。●「~始めと終わりの悲惨であった母の運命だけは、此児に繰り返させ度くないものだと、しみじみさう思ったのである」●明治時代に書かれた作品ですが、亡き妻を想う深い悲しみと、子供の人生を案じる親の気持ちは、現代でも変わりません。その色褪せしない切なさと慈愛の思いが思いっきり詰まった名随筆です。●なお、私は高1の時、「寺田寅彦随筆集(1巻)」でこの作品を読みました。●知命の年を越え、親となっての再読で、あの時よりも寺田寅彦さんの思いに少し近づけたかなと思っています。●また「寺田寅彦随筆集(1巻)」には、電車の混雑の考察、金平糖の考察、線香花火の考察などが書かれており、高校生の私に、何気ない日常であっても、科学的な視点で不思議に気付く、新しい発見をすることの大切さを示唆してくれた1冊でもありました。●『団栗』はお薦めの随筆です。もちろん、「寺田寅彦随筆集」も手に取ってみてはいかがですか。
安室奈美恵さんの言葉
●安室奈美恵さんの言葉
●本日は、安室奈美恵さんの言葉を紹介します。●私が安室さんに関心を抱いたのは、歌はもちろんファッションをも含めた彼女のカリスマ性、そして最後までトップアーティストのまま走りぬいた彼女の生き方、そんな生き様を生み出した理由を探りたいと考えたからです。●人は誰しも、何かしらの苦労をし、また努力をしながら一生懸命に生きているはずです。●そしてやはり私たちと同様、偉人と呼ばれる人を含め、世の中に名を残した人々にも、その努力の源となる人生哲学が必ずあり、それは私たちに何らかの指針を与えてくれるものだと考えているからです。●渋沢栄一さんの「夢七訓」に示されているように、夢を持っている人には、理想や信念があり、その信念に従い地味に努力を続け、そして名を残すのです。●「安室奈美恵」という人間の生き様が知りたくなったのです。●安室奈美恵さんは、小室哲哉さんプロデュースでミリオンセラーを連発するなど、1990年代の音楽界を牽引した歌手であるとともに、厚底ブーツ、細い眉毛、ミニスカートなど、安室さんを真似する通称「アムラー」が社会現象になりました。●それでは当時の女性たちのカリスマ的存在であった安室奈美恵さんの言葉を紹介します。
1 誰にでも可能性はある、私も最初はゼロだった
2 何をやってもダメなんだと言う人はきっと、色んな理由をつけて、まだ必死にはやってないだけかもしれない
3 簡単にダメだと折れるのか、それとも どうにかしてやろうじゃんと立ち上がるのか。私は後者の方が楽だと思う。
4 私の場合、自分の中で不安だったりスランプだと思う時は、とにかくそれをやり続けるんです。そこで何かを見出さないと毎回同じ壁にぶつかっちゃうから。
5 1%の才能と99%の継続、努力し続けることで今の自分がある。
6 いいものはいいって、ちゃんと言える人でありたいです。悔しいから言わないのではなく、かっこよかったものは良かったと。
7 迷った時は結局、ファーストインプレッションに従うんです。これも経験を積んできたうえで生まれた私のBasic
8 直感できめちゃうことがあるし、一貫性はないんです。でも絶対にこれ! っていう確信はある。
●いかがでしょうか。安室奈美恵さんの言葉に刺激されませんか。一見、順風満帆に過ごしていたように感じる芸能生活の裏側では、いかに苦しみ、もがき、悩みながら、日々努力を続けていたか、そのことが覗える言葉です。そんな彼女の生き様が「安室奈美恵」という一人の人間の名誉と地位を確立させたのではないでしょうか。人並み外れた努力をした者にしか感じることのできない、「迷った時は結局、ファーストインプレッションに従うんです。これも経験を積んできたうえで生まれた私のBasic」や「直感できめちゃうことがあるし、一貫性はないんです。でも絶対にこれ! っていう確信はある。」という言葉が、私はとても好きです。
ちょっと一息(お勧めの1冊)
ちょっと一息(お勧めの1冊)
著書名:『文学部唯野教授』 作者:筒井康隆
●本日「私の薦める1冊」は、筒井康隆さんが著した『文学部唯野教授』です。●唯野教授が、大学の教師陣の生活を覗き見ながら、大学内外で起きるあれこれを饒舌に語るとともに、各章の後半分で、唯野教授の「文芸批評論」の講義が展開されるという話です。●教授の給料や研究費の使い道、学内政治なども唯野教授お得意の皮肉で、普段覗くことの出来ない大学の裏側を見ることもできます。●蟻巣川主任教授のケチエピソードに教授会の裏事情、留学期間をごまかす牧口、蟇目の狂乱、赤いスーツの美人ちゃん(唯野教授がそう呼んでいました)榎本奈美子との関係は?、唯野教授の匿名作家としての活動は?●唯野教授の「文芸批評論」の講義は、唯野教授の教養溢れる饒舌に酔いしれながら、多くの文学理論がわかりやすく紹介されています。文学をいかに理論立てて分析するか、その方法が順序よく語られています。●「文学論」に素人の方でも優しい言葉で、ユーモアたっぷりに紹介されていますので、文学について容易に理解を深めることができるはずです。●文学には全く興味・関心がないという方は、適当に読み飛ばしても…。●この本を読みながら、思わず吹き出したり、にやけてしまったりすること請け合いです。●唯野教授の「文芸批評論」の講義は、高校生、大学生の皆さんに是非呼んで欲しい内容です。「文学論」の初歩を知るとともに、しっかり勉強をしようと、思わせてくるはずですから。●筒井康隆さんの『文学部唯野教授』を手に取ってみる、あるいは高校生や大学生のお子様にお薦めしてはいかがでしょうか。
武田信玄の言葉
●武田信玄の言葉
本日は、「疾(と)きこと風の如く、徐(しず)かなること林の如く、侵掠(しんりゃく)すること火の如く、動かざること山の如し。」で有名な、武田信玄の言葉を紹介します。武田信玄は、天下一の軍団として怖れられた武田軍を率い、家康からは武神と評価されるほどの戦に長けた戦国武将です。信玄は、幼小の頃より学問に励み、「自分の長所を伸ばすための心構え」や「人としての生き方」について述べています。そんな名言の中から、いくつかを紹介します。
1 人間にとって学問は、木の枝に繁る葉と同じだ。
2 一日ひとつずつの教訓を聞いていったとしても、ひと月で三十か条になるのだ。これを一年にすれば、三百六十か条ものことを知ることになるのではないか。
3 為せば成る為さねば成らぬ成る業(わざ)を成らぬと捨つる人のはかなき
4 負けまじき軍に負け、亡ぶまじき家の亡ぶるを、人みな天命と言う。それがしに於いては天命とは思はず、みな仕様の悪しきが故と思うなり。
5 自分のしたいことより、嫌なことを先にせよ。この心構えさえあれば、道の途中で挫折したり、身を滅ぼしたりするようなことはないはずだ。
6 信頼してこそ人は尽くしてくれるものだ。
7 いくら厳しい規則を作って、家臣に強制しても、大将がわがままな振る舞いをしていたのでは、規則などあってなきがごとしである。人に規則を守らせるには、まず自身の言動を反省し、非があれば直ちに改める姿勢を強く持たねばならない。
8 人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり。
9 武将が陥りやすい三大失観。
一、分別あるものを悪人と見ること
一、遠慮あるものを臆病と見ること
一、軽躁なるものを勇剛と見ること
武田信玄の「学問の大切さ」、「苦境にめげず、最後まで最善を尽くすことの重要性」、「人としての生き様」についての言葉は、他の偉人が述べている名言(格言)に通じます。やはり偉人と呼ばれる人々の考え方、生き方は、その人生や仕事に対しての哲学的な言葉として吐露されているからでしょうか。これらの言葉は、自分の現状を振り返るための指針となるものだと感じています。