新着情報

ちょっと一息(お勧めの1冊)

ちょっと一息(お勧めの1冊)
著書名:『イン・ザ・プール』 作者: 奥田英朗

●本日は、奥田英朗さんが著した、伊良部シリーズ第一弾である『イン・ザ・プール』を紹介します。●連作短編で神経科の患者の物語が5つ描かれています。●注射を打つのがとにかく大好きで、滅茶苦茶、破天荒と言い表すべき精神科医である伊良部一郎の物語。●伊良部のあまりにも突飛のない言動に唖然としながらも、伊良部の天真爛漫さに思わず微笑んでしまう一冊です。●ただ、少しばかり「下ネタ」的なところもあるので、ご注意を●それでは、奥田英朗著、『イン・ザ・プール』を紹介します。
●伊良部総合病院の地下に診療所を構える精神科医の伊良部一郎は、色白肥満で中年マザコン、その上子供っぽくて注射が好きな変わり者。●彼の元に訪れるのは、水泳中毒、持続勃起症、自意識過剰、携帯中毒、強迫神経症の悩みを抱えた面々。●伊良部先生は、人の話は聞かない、やることなすことが理解不可能、とにかく滅茶苦茶で、注射ばかり打ちたがる。●それが治療と言えるものなら、あまりにも奇想天外、奇天烈すぎて、本当に医者なのかと勘ぐりたくなる。●患者は伊良部の言動に不信感を抱きあきれつつも、通っているうちにどこか彼を憎めなくなる。彼の天真爛漫さからくるものか?●でも結局、全員の症状が良くなってしまう。伊良部先生は、実は凄い人なのかも知れない。●確かに、伊良部先生、時に的を射ることも言っておりました。「ストレスなんてのは、人生についてまわるものであって、元来あるものをなくそうなんてのは無駄な努力なの」。●先生の元妻とのやりとり看護師マユミの存在もおもしろい●伊良部一郎シリーズの3部作は、『イン・ザ・プール』、『空中ブランコ(直木賞受賞)』、『町長選挙』です。●機会がありましたら、お手にとってはいかがでしょうか。
ここで少しネタばらし
1 イン・ザ・プール
体調不良で伊良部の元に訪れた大森和雄。ストレスによる心身症と診断されるのですが、…。「伊良部先生、あなたも泳いでしまうのですか」と、思わず突っ込みたくなる。
2 勃ちっぱなし
持続勃起症の田口哲也は、伊良部の元へ通院するがなかなか良くならない。こんなこと自分の身に起こったら笑い事ではない。だけどその深刻さへの伊良部先生の対応がやはりおかしい。
3 コンパニオン
誰かに尾行されているに違いないという思い込みから体調を崩した広美が伊良部の元を訪れる。伊良部先生、すこしスケベ心を出して、このタレント志望の女性をボディガードすると言い出す始末。
4 フレンズ
今で言う「スマホ依存症」の話。携帯依存の雄太は、伊良部の元を訪れる。そんな雄太に対して伊良部がとった行動は、やはり突飛なもの。高校生の男子と、肉感的な看護師のマユミの対面する場面がおもしろい。
5 いてもたっても
強迫神経症のルポライター義雄が、伊良部の元を訪れる。相変わらず、伊良部先生の治療とは、とんでもありません。でも、まさかこんな展開になるとは。結局、義雄がすばらしいルポライトをしたことには間違いはありませんから。