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ちょっと一息(お勧めの1冊)

ちょっと一息(お勧めの1冊)
著書名:『高円寺純情商店街』 作者:ねじめ正一
●本日の「私の薦める1冊」は、昭和30年代後半頃の東京高円寺駅北口「純情商店街」を舞台にした6つの短編、『高円寺純情商店街』です。●作者が生れ育った街に思いを込め、どれほど強く商店街を愛したかがよく顕れた物語です。●それでは、かつて中学校国語教科書にも掲載されていた、ねじめ正一さんの『高円寺純情商店街』を紹介します。
●主人公の名前は「正一」。正一の生家は、商店街の中でも「削りがつをと言えば江州屋」と評判をとる乾物屋で、主に鰹節や干物を売っていますが、卵までも売っています。正一は、母親が洗い、ばあさんがふかし、父親が削る「江州屋の削りがつを」をふるいにかけて「粉かつを」をつくる係です。●人々の声や削り節の匂いや焼印の押された綺箱の印象、死んだ金魚を手にする感覚などが情感豊かに表現されるとともに、正一少年の五感を通して映し出された父や母、祖母、そして商店街に暮らす人々のあり様が丹念に描写されています。とにかく正一の父親がいい味を出しています
●ここで少しネタばらし。
1 天狗熱
 大口の顧客を失う危機に直面した父親。熱を出して寝込こみますが、危機を回避したとたんに、自分が熱を出したのはデング熱を患ったからだと苦しい言い訳をする父親の話。
2 六月の蠅取紙
 湿気が大敵な乾物屋の梅雨時、家族の苛立ちは一層募ります。そんな折り、父が売り物に蠅が集るという俳句を作り、それを商店街の句会で発表すると言い出します。そのことが原因で母と夫婦喧嘩をするという話。
3 もりちゃんのプレハブ
 乾物屋の従業員、もりちゃん(盛義)とカズ江という女性との恋物語。大きなおっぱいの尻軽女との恋をどこか歓迎しない街の雰囲気。そしてもりちゃん(盛義)は、結婚を反対され田舎に連れ戻されるという話。
4 にぼしと口紅
 隣の空き店舗に引越して来た化粧品店。若くて綺麗な化粧品店の女性従業員達に影響され、それまで化粧気もなかった祖母と母の浮かれる様子。父もこっそり養毛剤を購入しますが、新装開店のチラシで、儲けの違いに圧倒されるという話。
5 富士山の汗
 10日間も風呂に入らずちんちんが痒くなった正一は銭湯に行きます。同級生の宮地さん(女の子)が番台にいることに気づき、恥ずかしくて湯ぶねを出られないでいると、いきなりちんちんを蹴られるという話。
6 真冬の金魚
 眼鏡店が放火され、ボヤ騒ぎが起こります。店街の面々が一致団結して無事に消火しましたが、消火の際、用水桶でボーフラ除けのために飼われたいた金魚が消火のため水と一緒に火へと投げ出され犠牲になるという話。
●詩人でもある、ねじめ正一さんが初めて手がけた小説『高円寺純情商店街』(直木賞を受賞)です。『熊谷突撃商店』『眼鏡屋直次郎』『天使の相棒』『荒地の恋』『ひゃくえんだま』などの作品を著している、ねじめ正一さんの『高円寺純情商店街』はいかがでしょうか。