校長室から
ちょっと一息(お勧めの1冊)
ちょっと一息(お勧めの1冊)
著書名:『文学部唯野教授』 作者:筒井康隆
●本日「私の薦める1冊」は、筒井康隆さんが著した『文学部唯野教授』です。●唯野教授が、大学の教師陣の生活を覗き見ながら、大学内外で起きるあれこれを饒舌に語るとともに、各章の後半分で、唯野教授の「文芸批評論」の講義が展開されるという話です。●教授の給料や研究費の使い道、学内政治なども唯野教授お得意の皮肉で、普段覗くことの出来ない大学の裏側を見ることもできます。●蟻巣川主任教授のケチエピソードに教授会の裏事情、留学期間をごまかす牧口、蟇目の狂乱、赤いスーツの美人ちゃん(唯野教授がそう呼んでいました)榎本奈美子との関係は?、唯野教授の匿名作家としての活動は?●唯野教授の「文芸批評論」の講義は、唯野教授の教養溢れる饒舌に酔いしれながら、多くの文学理論がわかりやすく紹介されています。文学をいかに理論立てて分析するか、その方法が順序よく語られています。●「文学論」に素人の方でも優しい言葉で、ユーモアたっぷりに紹介されていますので、文学について容易に理解を深めることができるはずです。●文学には全く興味・関心がないという方は、適当に読み飛ばしても…。●この本を読みながら、思わず吹き出したり、にやけてしまったりすること請け合いです。●唯野教授の「文芸批評論」の講義は、高校生、大学生の皆さんに是非呼んで欲しい内容です。「文学論」の初歩を知るとともに、しっかり勉強をしようと、思わせてくるはずですから。●筒井康隆さんの『文学部唯野教授』を手に取ってみる、あるいは高校生や大学生のお子様にお薦めしてはいかがでしょうか。
武田信玄の言葉
●武田信玄の言葉
本日は、「疾(と)きこと風の如く、徐(しず)かなること林の如く、侵掠(しんりゃく)すること火の如く、動かざること山の如し。」で有名な、武田信玄の言葉を紹介します。武田信玄は、天下一の軍団として怖れられた武田軍を率い、家康からは武神と評価されるほどの戦に長けた戦国武将です。信玄は、幼小の頃より学問に励み、「自分の長所を伸ばすための心構え」や「人としての生き方」について述べています。そんな名言の中から、いくつかを紹介します。
1 人間にとって学問は、木の枝に繁る葉と同じだ。
2 一日ひとつずつの教訓を聞いていったとしても、ひと月で三十か条になるのだ。これを一年にすれば、三百六十か条ものことを知ることになるのではないか。
3 為せば成る為さねば成らぬ成る業(わざ)を成らぬと捨つる人のはかなき
4 負けまじき軍に負け、亡ぶまじき家の亡ぶるを、人みな天命と言う。それがしに於いては天命とは思はず、みな仕様の悪しきが故と思うなり。
5 自分のしたいことより、嫌なことを先にせよ。この心構えさえあれば、道の途中で挫折したり、身を滅ぼしたりするようなことはないはずだ。
6 信頼してこそ人は尽くしてくれるものだ。
7 いくら厳しい規則を作って、家臣に強制しても、大将がわがままな振る舞いをしていたのでは、規則などあってなきがごとしである。人に規則を守らせるには、まず自身の言動を反省し、非があれば直ちに改める姿勢を強く持たねばならない。
8 人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり。
9 武将が陥りやすい三大失観。
一、分別あるものを悪人と見ること
一、遠慮あるものを臆病と見ること
一、軽躁なるものを勇剛と見ること
武田信玄の「学問の大切さ」、「苦境にめげず、最後まで最善を尽くすことの重要性」、「人としての生き様」についての言葉は、他の偉人が述べている名言(格言)に通じます。やはり偉人と呼ばれる人々の考え方、生き方は、その人生や仕事に対しての哲学的な言葉として吐露されているからでしょうか。これらの言葉は、自分の現状を振り返るための指針となるものだと感じています。
ちょっと一息(お勧めの1冊)
ちょっと一息(お勧めの1冊)
著書名:『イン・ザ・プール』 作者: 奥田英朗
●本日は、奥田英朗さんが著した、伊良部シリーズ第一弾である『イン・ザ・プール』を紹介します。●連作短編で神経科の患者の物語が5つ描かれています。●注射を打つのがとにかく大好きで、滅茶苦茶、破天荒と言い表すべき精神科医である伊良部一郎の物語。●伊良部のあまりにも突飛のない言動に唖然としながらも、伊良部の天真爛漫さに思わず微笑んでしまう一冊です。●ただ、少しばかり「下ネタ」的なところもあるので、ご注意を●それでは、奥田英朗著、『イン・ザ・プール』を紹介します。
●伊良部総合病院の地下に診療所を構える精神科医の伊良部一郎は、色白肥満で中年マザコン、その上子供っぽくて注射が好きな変わり者。●彼の元に訪れるのは、水泳中毒、持続勃起症、自意識過剰、携帯中毒、強迫神経症の悩みを抱えた面々。●伊良部先生は、人の話は聞かない、やることなすことが理解不可能、とにかく滅茶苦茶で、注射ばかり打ちたがる。●それが治療と言えるものなら、あまりにも奇想天外、奇天烈すぎて、本当に医者なのかと勘ぐりたくなる。●患者は伊良部の言動に不信感を抱きあきれつつも、通っているうちにどこか彼を憎めなくなる。彼の天真爛漫さからくるものか?●でも結局、全員の症状が良くなってしまう。伊良部先生は、実は凄い人なのかも知れない。●確かに、伊良部先生、時に的を射ることも言っておりました。「ストレスなんてのは、人生についてまわるものであって、元来あるものをなくそうなんてのは無駄な努力なの」。●先生の元妻とのやりとりや看護師マユミの存在もおもしろい●伊良部一郎シリーズの3部作は、『イン・ザ・プール』、『空中ブランコ(直木賞受賞)』、『町長選挙』です。●機会がありましたら、お手にとってはいかがでしょうか。
ここで少しネタばらし
1 イン・ザ・プール
体調不良で伊良部の元に訪れた大森和雄。ストレスによる心身症と診断されるのですが、…。「伊良部先生、あなたも泳いでしまうのですか」と、思わず突っ込みたくなる。
2 勃ちっぱなし
持続勃起症の田口哲也は、伊良部の元へ通院するがなかなか良くならない。こんなこと自分の身に起こったら笑い事ではない。だけどその深刻さへの伊良部先生の対応がやはりおかしい。
3 コンパニオン
誰かに尾行されているに違いないという思い込みから体調を崩した広美が伊良部の元を訪れる。伊良部先生、すこしスケベ心を出して、このタレント志望の女性をボディガードすると言い出す始末。
4 フレンズ
今で言う「スマホ依存症」の話。携帯依存の雄太は、伊良部の元を訪れる。そんな雄太に対して伊良部がとった行動は、やはり突飛なもの。高校生の男子と、肉感的な看護師のマユミの対面する場面がおもしろい。
5 いてもたっても
強迫神経症のルポライター義雄が、伊良部の元を訪れる。相変わらず、伊良部先生の治療とは、とんでもありません。でも、まさかこんな展開になるとは。結局、義雄がすばらしいルポライトをしたことには間違いはありませんから。
松下幸之助さんの言葉
松下幸之助さんの言葉
パナソニック(松下電器産業)を一代で築き上げた松下幸之助さんは、「経営の神様」とも呼ばれ、PHP研究所を設立して倫理教育に乗り出すとともに、「松下政経塾」を立ち上げ、政治家の育成にも尽力したことで有名です。そんな松下幸之助さんの基本理念は、いかに「人を育てる」かであったと、私は考えています。その一端は「 松下電器は人を作るところでございます。」や「企業は人なり。」などの言葉に垣間見られます。松下幸之助さんは、たくさんの名言(格言)を残されていますが、本日は、「自己を成長させる」ために大切な考え方が述べられていると、私が感じている言葉(名言)をいくつか紹介します。
1 人と比較をして劣っているといっても、決して恥ずることではない。けれども、去年の自分と今年の自分とを比較して、もしも今年が劣っているとしたら、それこそ恥ずべきことである。
2 誰でもそうやけど、反省する人は、きっと成功するな。本当に正しく反省する。そうすると次に何をすべきか、何をしたらいかんかということがきちんとわかるからな。それで成長していくわけや、人間として。
3 どんなに悔いても過去は変わらない。どれほど心配したところで未来もどうなるものでもない。今、現在に最善を尽くすことである。
4 わからなければ、人に聞くことである。
5 人の言に耳を傾けない態度は、自ら求めて心を貧困にするようなものである。
人はそれぞれ個性があり、長所もあれば短所もありますが、ややもすると他人と自分とを比べ、自分が今置かれている状況や状態を卑下してしまうこともあるのではないでしょうか。時には、人の揚げ足をとったり、優越感を感じたりするといった、さもしい心が顔を出すことも…。でも松下幸之助さんは言います。人と自分とを比べて何になりますか。大切なのは自分の成長を見つめることですと。そしてそのためにも正しい反省をしなさいと。そして、今を、現在を一生懸命に生きなさい。今できるすべてを出し切りなさいと。「正しい反省」が難しいところです。そのためには、やはり真摯な態度で、相手の話に耳を傾けることが必要なようです。子供たちには、松下幸之助さんの思いを、私なりの言葉で語りかけています。子供たちが自己の成長を実感し、自尊感情を高め、意気揚々と学校生活を送れることを強く願っています。
ちょっと一息(お勧めの1冊)
ちょっと一息(お勧めの1冊)
著書名:『わしらは怪しい探険隊』 作者:椎名誠
●本日「私の薦める1冊」は、椎名誠さんが隊長の「東日本何でもケトばす会」(略称東ケト会)の面々が島に行って、野外でテントを張ってひたすら忍耐生活を送る『わしらは怪しい探険隊』です。●島ならではのトラブル話が面白いとともに、大人が本気で遊ぶことのシリアスさがよく表れています。●それでは、椎名誠さんの『わしらは怪しい探険隊』を紹介します。
●ガキ大将が成人したようなシーナこと椎名誠さんのもとに結成された東ケト会。●いい歳した大人が鍋釜とテントを持って、行き当たりばったりに神島、八丈島、粟島などの離島へ旅に出て、どんちゃん騒ぎの酒盛り大宴会をする。●自然と戯れるというより、自然にやられっぱなしで、あまりかっこよくはないけれども、男達が集まって馬鹿馬鹿しい事を楽しく、時にはうんざりしながらやっている光景がとてもおもしろい。その場に居るような気分になります。●時より挿入される椎名さんの独特な感性も興味をそそられます。例えば、蛇に呑まれる時は、頭から飲まれた方が良いか、足から飲まれた方が良いか、「蛇に呑まれる方法」の持論を展開する場面など。● 宅島では、巡査さんが何かを必死に言っていたのに、適当に聞き流したために朝起きたらテントが水没して、命の危険を感じたという話●神島の蚊の来襲、「蚊柱」と呼ばれる蚊の大群に遭遇した時の緊張感と開き直った時の大胆さ。都会と田舎の蚊の違いについて考察する場面もおもしろい。●神島を一周泳ぐ試みでは「離岸流」に出会い、沖へどんどん流されていくという、笑ってはいられない状況なのに、その必死さに何故かユーモラスさえ感じてしまいます。●椎名さんが、この本を著しているのだから、椎名さんは離岸流を回避し、無事だったのだという読み手の安心からでしょうか。● さらにこの本は、椎名さんの「食」へのこだわりがよく分かる、「食エッセイ」の一面を持ち合わせています。● 現代版「水曜どうでしょう」のようで、気ままな自由人に憧れる人には、特に心地よい作品となるのではないでしょうか。●「沢野ひとし」さんのイラストも良い味をだしています。●少し古い著作とはなりますが、機会があれば、是非手に取ってみてはいかがでしょうか。きっと疲れたときのブレークタイムとして、心にオアシスを与えてくれるはずです。